今秋着物を新調しました。
生地は西陣のお召ので、柄は市松に蜻蛉です。
市松文様は江戸時代の歌舞伎役者 佐野川市松が舞台衣装で白と紺の正方形を交互に配した袴を履いたことが由来とされています。
当時は着物などの柄として大流行したそうです。
蜻蛉は「勝ち虫」という縁起物とされています。
雄略天皇の詠んだ歌によるといいます。
「み吉野の 袁牟漏(をむろ)が嶽に 猪鹿伏(ししふ)すと 誰れそ 大前に奏(まを)す やすみしし 我が大君の 猪鹿(しし)待つと 呉床(あぐら)に坐(いま)し 白栲(しろたへ)の 衣手着(そてき)そなふ 手腓(たこむら)に 虻(あむ)かきつき その虻を 蜻蛉(あきづ)早咋(はやぐ)ひ かくの如 名に負はむと そらみつ 倭の国を 蜻蛉島とふ」
雄略天皇が袁牟漏が嶽に狩りに出かけた際に呉座に座って獲物を待っていると虻に腕を食いつかれます。
そこへ蜻蛉がやってきて虻をさっと食ってしまいます。
この様子に感心した雄略天皇は「蜻蛉が自分の名を立てた」としてその地を「蜻蛉島」と名付けます。
また蜻蛉が前にしか進まず退かないという所から、「不転退」の意としても重宝され、戦国時代の武士は武具、防具、陣羽織や印籠の装飾に好んで用いていました。
「名を立てる」「不転退」など意味付けは仰々しいですが、当人としては「ありきたりじゃなくて洒落ている」という理由で選びました。
お召独特の張りがあって捌きも良く着心地が良く、とても気に入っています。
遠目で見ても市松の濃淡で織りの風合いが引き立っている所も良いですね。